Latest research 最新研究
尊厳概念のグローバルスタンダードの構築に向けた
理論的・概念史的・比較文化論的研究
Towards a global standard of dignity as a philosophical concept:
theoretical approaches, conceptual histories,
and cross-cultural comparisons
本研究プロジェクトでは、尊厳概念を多角的な観点から総合的に分析した上で、従来は欧米中心であった解釈に対して、非欧米圏の議論を適切に繰り込んで、社会の民主主義化および多元主義化を推進できるような、多様性を踏まえた普遍妥当的な尊厳概念のグローバルスタンダードを日本から発信することを目指す。
研究の背景・目的
第二次世界大戦後、全体主義のもたらした強大なカタストロフィーに対抗する概念として尊厳は再認識され、「国連憲章」(1945年)以降、「日本国憲法」や「ドイツ連邦共和国基本法」などの各国憲法典、さらに近年の「国連 GC」や「EU 憲法」、「障害者権利条約」など現在に至るまで尊厳概念の重要性は国際的に大変高まっている。
しかも、最近では、脳死・臓器移植・ES 細胞研究・iPS 細胞研究・ゲノム編集などの先端医療技術の社会的受容とともに、AI 革命やロボット技術などの先端科学技術の社会的受容の両コンテクストで尊厳が問題となっている。
これに加えて、移民・難民問題、マイノリティー問題、格差社会などといった現代の多種多様な社会問題は、直接間接を問わず尊厳ないし尊厳の毀損に深く関わっている。その意味で尊厳は規範的概念として現代社会のキーワードの一つになっていると言える。
本研究プロジェクトでは、上記の問題状況を踏まえて尊厳概念を多角的な観点から総合的に分析した上で、従来は欧米中心であった解釈に対して、非欧米圏の議論を適切に繰り込んで、社会の民主主義化および多元主義化を推進できるような、多様性を踏まえた普遍妥当的な尊厳概念のグローバルスタンダードを日本から発信することを目指す。
研究の方法
本研究プロジェクトでは、尊厳概念を多角的な観点から分析するために、欧米圏および非欧米圏の様々な学問領域の代表的な研究者が加わった研究グループを形成するとともに、それを欧米関係(哲学・応用倫理学などを含む)担当班・日本関係担当班・中国関係担当班・韓国関係担当班・イスラーム関係担当班・仏教/インド哲学関係担当班の6班に分ける。
その上で、(1)価値論的アプローチを採用して、(2)欧米圏の尊厳理解を根本的に再検討/整理する。さらに(3)非欧米圏の尊厳理解を新たに掘り起こすとともに、概念史を構築して、最終的には(4)欧米圏と非欧米圏の議論とを突き合わせて比較し統合して、新たな尊厳理解を定式化する、という手順で研究課題を解明し、現代社会の諸問題に応える。
期待される成果と意義
比較文化論的観点を本格的に導入して新たな尊厳理解のために有益な視座や素材を掘り起こすことで、本研究プロジェクトによって東アジアの「生命の尊厳」を射程に含んだ尊厳概念を適切に定式化できれば、尊厳に関する従来の欧米の人間中心主義的な研究に対して、東アジアをはじめとする非欧米圏の視点が理論的にも一定の見直しを迫ることになる。
この時はじめて尊厳研究のパラダイム転換も可能である。研究成果を論文集にして江湖に問う予定である。
当該研究課題と関連の深い論文・著書
・加藤泰史、小島毅、シェーンリッヒ、ウォルドロンほか『思想』(「尊厳概念のアクチュアリティ」特集号)1114 号、岩波書店、184pp.、2017 年。
・加藤泰史、宇佐美公生、ビルンバッハー、クヴァンテほか『尊厳概念のダイナミズム』、法政大学出版局、436pp.、2017 年。
・最新著書等一覧はこちらを御覧ください 執筆・翻訳一覧
研究期間と研究経費
平成30年度-令和4年度
130,500 千円
研究助手/Research Assistant
森永駿
研究助手/Research Assistant
1990年鹿児島県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。専門はハイデガー哲学。現在は、初期から前期にかけての真理論を中心に研究している。
久保田進一
特任研究員/Project Researcher
1967年静岡県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期課程修了(博士(文学))。専門はデカルト哲学、生命倫理、心の哲学、AIの哲学など。現在は、心、意識、AIについて、または今後の社会の人間のあり方について関心がある。
Shin’ichi KUBOTA
Project Researcher
Born in Shizuoka prefecture in 1967. I am completed the doctoral program at the Graduate School of Letters, Nagoya University (Doctor (Literature)). My specialty is Cartesian philosophy, bioethics, philosophy of mind, philosophy of AI, etc. Currently, I am interested in mind, consciousness, AI, or the future of human beings in society.
横山浩子
加藤研究室秘書
宮前祐子
科研費HP管理者/Non-research Assistant
加藤泰史 最新執筆・翻訳
最新著書等一覧はこちらを御覧ください 執筆・翻訳一覧